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いますぐ、誰かに話したくなるような音楽。
神戸の街に、ひとりのシンガー・ソングライターがいる、
ということを知ってもらいたいのです。
宮田ロウさんとは、何年か前に大阪でDJ をしたときクラブで初めてお目にかかって、そのとき『ゴリラ』というアルバムのCDR を貰いました。
なんとなくピンとくるものがあって、東京の自室に戻って聴いてみると、やはり悪くない、ひじょうに誠実な音楽で、
CDR に書いてあったレーベルの電話番号に電話してみるとご本人が出て話してくれました。
次の作品もぜひ聴かせてください、と言って電話を切りました。
翌年に関西でお目にかかったとき、むかし書いた「メッセージ・ソング」という曲を次作でカヴァーしたい、とのこと。
いよいよ新作を作るのだな、と期待していましたが、なかなか完成しなかったようで。
そして今年の7 月、京都の和泉屋旅館で行われた「Lounge NAMI」というパーティーで会ったとき、ようやく新作アルバムのCDR を戴いて、
何か推薦文を書く約束をしました。ちなみにアルバムには『ブラザー、シスター』というタイトルが付けられていました。
聴いてみると、これはもう誰かに話したくなるような、とくに何曲かはいますぐ知り合いの何人かに聴かせたくなるような出来映えで、
静かに興奮してしまいました。
8 月に大阪の「WMD」というパーティーで会って感想を伝え、とりわけ「悲しみはさざ波のように」という曲とか、
多くの人に聴いてもらえるチャンスがあれば良いのに、と伝えました。とくに自分がクラブで音楽の話をする友人とか、
あるいは長門さんとか、大江田さんとか、松永さんとか、水上さんとか、矢島さん、といったレコードを扱うお店の人に聴いてもらうきっかけを
作れないかな、というような話をご本人にしていたら、そこにちょうどグルーヴあんちゃんが近づいてくるのを見かけたので呼び止め、
ねえ、あんちゃんのところで7インチを作らない?と頼んでみたのでした。やはりレコードで聴いてもらうのがいちばん、ですものね。
すぐに動いてくれたグルーヴあんちゃんとオレンジ・レコーズの東野くん・近藤社長には大感謝です。
「レコードの日」のサイトの紹介文に、小西康陽が絶賛、と書いてありましたが、絶賛、とまで言うつもりはないです。
ぼくの絶賛なんて、ぜんぜん頼りにならないと思いますし。でも「まんまる」という曲とか、やはり素晴らしいんです。
とにかく、関西に、神戸の街に、むかしバンドをやっていて、けっきょく解散してソロで活動するようになったひとりのシンガー・ソングライターが
いる、ということを知ってもらいたいのです。サーカス・マキシマスというバンドが不発に終わったジェリー・ジェフ・ウォーカーのように、
ウェストというバンドを続けて行くことを諦めたロン・コーネリアスのように、ブルース・マグースのメンバーだったエリック・ジャスティン・カズ
のように、元ストーン・カントリーというバンドの一員だったスティーヴ・ヤングのように、あるいはフライング・マシーンを解散させた
ジェイムズ・テイラーのように、いつか宮田ロウさんも「これぞ彼の一枚」と言えるようなアルバムを作るだろう、と期待しています。
2018 年8 月31 日 小西康陽